ちくほくのひとVol.02小松知寛さん

農業が楽しい!
三年後はもっと楽しく農業をしたい!!

長野市方面でいちごといえば筑北村産といえるほど、この辺りでは有名な『坂井いちご園』。村人は孫が遊びに来たらいちご狩りに連れて行き、出かけるときはお土産にいちごを買いに行くほど、坂井いちご園は地域の人々に親しまれている。いちごが新鮮で傷みにくく、味が濃いというのも人気の理由だ。
坂井地域は上田市、千曲市、青木村と隣接しアクセスがよいため、近隣地域から訪れる人も多い。坂井いちご園の前には『まんだらの庄』という直売所があり、村内の名産品・農作物が手に入る。

いちご園に向かう車中で冠着山(かむりきやま)の説明を受けた。毎年山頂まで酒を運び、飲む祭事があるのだとか。筑北村と千曲市にまたがるその山は、民話『うばすてやま』の舞台といわれる姨捨山という呼び名のほうが、正式名称よりも一般的かもしれない。冠着駅という駅もあるのに残念だ。そういえば、冠着駅には“ねこ駅長”がいるというし、いつか訪れてみたい。

いちご園に到着し、ハウスの扉を開けた瞬間、ふわっと広がるいちごの香りに包まれた。それだけでなぜか幸せな気分にしてくれる。今回お話を伺う坂井いちご園の小松さんは22歳。これからの農業を担う若者は、いまや今後の農業について、どんなことを考えているのだろうか。

[ 2016年3月31日更新 ]


農業をやるために! 高校入学と同時に親元を離れ孫ターンで筑北村へ

子どものころから農業に興味を持っていました。筑北村で農業をやっている祖父母がいて、小さい頃から手伝っていたからだと思います。
自分では覚えていないんですが、小さい頃「ぼくがおじいちゃんの後を継ぐ!」と言っていたと、祖父に聞きました。祖父の子どもは女性ばかりだったこともあって、祖父にとってこの言葉はうれしかったみたいです。

「将来は農業をやる!」と決めていたので、中学校卒業後の進路先として当然のように農業高校を考えました。候補として、南安曇農業高等学校(安曇野市豊科)と更級農業高等学校(長野市篠ノ井)がある中で、当時住んでいた松本市に近い南安曇農高ではなく更級農高を選び、高校入学と同時に家族と離れ、一人で祖父母の住む筑北村に来ました。
祖父母の家のほうが高校までの距離が近いということもありますが、筑北村にいれば学校で農業を学ぶだけでなく、祖父母の手伝いでも農業を学べると思ったからです。
農作物を種から育て、苗が出て成長し、それを収穫する。それが楽しいんです。品質調査でよい結果を出せたときは、さらに喜びを感じますね。

まだ就農したばかり。でも三年後を見据えて

現在は、祖父母と一緒に農業をしています。お米がメインで、そのほかにケール、そば、麦などを栽培しているほか、自家用の野菜も育てています。
いままでは祖父の手伝いという感じでしたが、今年からは正式に就農しました。経理や資材の調達、人材の確保なども行っていて、今は初めての確定申告に苦労しています。でも、自分で考えてやるのが、難しいですが楽しい。今はまだ祖父に相談したり指摘されたりですが、いずれはすべて自分でできるようになりたいです。

また、村営施設である坂井いちご園の栽培責任者をしています。今年で二年目です。前任の責任者が辞めることになった際、祖父に依頼があったのですが、自分が担当することになりました。祖父は村内、特に農業関連のことでは名の知れた人なので、自分が引き受けることはプレッシャーでしたね。今年からは運営がそれまでの生産組合から筑北村に変更になったこともあり、まだまだ探り探りです。

今後の目標は、農業での法人化です。気心の知れた仲間と一緒にできたら、農業はもっと楽しいと思います。
法人化すれば人を雇いやすくなるし、そうすれば扱える量も増えます。農地を手放す人が増えているからこそ、それらを有効活用していきたいです。坂井いちご園も、法人化したら農業法人として請け負いたいと思っています。

自慢できる農産物と、やりがいを感じる農産物

自分が育てたものの中で一番の自慢はお米です。化学肥料を使わない有機米を作っていて、品質調査で魚沼産のお米よりも上の結果が出たときは本当にうれしかったです。

でも、一番やりがいを感じているのはいちごです。手間がかかるので女性向きな農作物だと言われていますが、それがキライじゃないんです。今年はいちごの株をすべて入れ替えたんですが、その株を大きくすることができました。
坂井いちご園では、受粉のためにミツバチを使っていて、ハウスの中には蜂がたくさんいます。手作業で受粉作業をするよりもおいしいいちごができるため、大切な存在です。いまだに少し怖いですけど、蜂ともうまく付き合えるようになってきました(笑)。

坂井いちご園は生産・販売だけでなく、観光農園としていちご狩りも行っています。食べるいちごの量は人によってまったく違うので、いちごの熟し具合やいちご狩りに入れられる人の数などのバランスを読み取るのが難しいです。10個程度しか食べない人がいるかと思えば「133個食べました」と自己申告してくださる人もいて。まだまだ勉強中ですが、いちごを食べたお客さまに「おいしい」と言われたときはやっぱりうれしいですね。

筑北村は故郷のような場所であり、カッコイイ農業ができる場所

筑北村に住む前は、正直なところ「ど田舎」だと思っていました。祖父母の手伝いをしていたからということもありますが、若者がいないという印象だったので。実際に住んでみて、消防団などの活動を通じて若い人や同世代の人も結構いるんだと知りました。

自分は高校入学と同時に筑北村に来ましたが、不便さを感じませんでした。中学生のときはコンビニもあまり利用しなかったから、歩いて行ける距離になくても何とも思わなかったんです。今は車を運転できますし、車で10分以内にあるので十分です。

子どもの頃からなじみのある自分にとって、筑北村は故郷のようなもの。家族と松本で暮らしていた時間のほうが長いけれど、もう祖父母がぼくにとっての親みたいな存在です。たまに父親と二人で酒を飲むと緊張しちゃいます。これからもずっと、筑北村で農業をして暮らすつもりです。筑北村は中山間地だから、いいものができます。ただ大きくやるより、おいしいものを作りたいです。そっちのほうがカッコイイですよね?

筑北村の自慢が人のつながりであることはもちろんですが、きれいな川も魅力です。熊の川をはじめ、ヤマメやイワナなどきれいな川にしか生息しない魚が釣れるんです。ビルがないからこその見通しのよさもおすすめです!

小松知寛さん(22歳)

/出身:長野県松本市 職業:農業 地域:坂井
中学卒業と同時に家族と離れ、祖父母の暮らす筑北村に孫ターンして移住。祖父母とともに米作りなどの農業に従事しつつ、村営の坂井いちご園の責任者を務めている。三年後の目標は友人と農業法人を立ち上げること。

ちくほく・ほくほく体験

いちご園などで農作業をしていると、おじいちゃんおばあちゃんが声をかけてくれて、お茶や差し入れを持ってきてくれるんです。時間のあるときはゆっくりお話を聞いています。祖父は村中の人を把握していて、風貌を伝えればすぐに名前が出てくる。ぼくもそんなふうになりたいです。

お気に入りちくほくスポット

坂井から千曲市方面に抜ける山の中にある、夜景スポットです。

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