ちくほくのひとVol.04山越友子さん

交流の場・憩いの場として提供していきたい
村の食堂『ふるさと館』経営者の思い

『直売所 本城らんらん広場/ふるさと館』へ向かった。筑北村の最寄りインターチェンジである麻績ICから松本方面へ向かう際に利用する国道403号線沿いにある直売所兼食堂だ。
取材前の腹ごしらえに選んだのは評判の週替わり定食。この週のメインディッシュはハンバーグだった。「酵素玄米が食べられる健康的な定食」とは聞いていたが、ハンバーグに添えられた野菜の種類の多さには驚いた。キャベツ、レタス、ブロッコリー、トマト、ナスの素揚げ、そしてブルーベリー。ヘルシーで女性にもうれしい定食だった。

「今は庭で山野草を育てるのが楽しみ」とほほえむ山越さんの住まいは本城地域乱橋区。江戸時代には善光寺街道の間の宿(あいのしゅく:宿場と宿場の間に興った休憩場所)として栄え、今でも古い家並みが残る趣深い地域だ。住民のつながりが強く、行事も盛んに行われているという。
いただいた定食には、外食であっても家庭を感じさせる優しさがあった。山越さんの人柄が醸し出すものなのだろう。彼女の人柄や彼女が作りだす料理は、筑北村でどのように育まれたのだろうか。

[ 2016年8月29日更新 ]


真っ暗な山の中で星が輝く、初めての筑北村

筑北村には主人の実家がありましたから、移住する前も年に2回ほどは遊びに来ていました。初めて来たのは夜。真っ暗で、星がものすごくきれいだったことを覚えています。次の日、明るくなってみてびっくりです、周りに何もなくて(笑)。今のように道路も整備されておらず、まだ車1台がやっと通れるくらいの道でした。

結婚してしばらくは中京の都市圏に住んでいたんです。当時は今と比べればまだまだ自然は多かったですが、それでも公害がひどくて青い空は見えませんでした。一番上の子供が病弱で、ひと月に1回くらいのペースで病院へ通っていたほどだったので、結婚して3年がたったころに引っ越してきました。やっぱり空気が違いますし、自然の中で飛び回れることもあって、すっかり健康になりましたよ。保育園からは筑北村で育てただけで、特に何もしていないのに(笑)。

雪で車が上がらなくて家に帰れなくなったとか、畑は平らなものだと思っていたらすごい坂だったとか、筑北村に来て驚いたことはいろいろあります。でも、若いころから自然が好きだったので、山の中での生活はまったく気にならなかったです。畑も傾斜があるからこそ、冬になればスキーができましたしね。

ふるさと館を交流の場・憩いの場として提供していきたい

筑北村に住むようになってしばらくは専業主婦をしていましたが、3年ほどたってからJAで働き始めました。女性部の事務局やJA大学の指導員などをし、生活指導員を10年以上務めました。
今はふるさと館の経営、調理を担当しています。もともとはJAが運営していましたが、いったん閉鎖になったんです。勤務時代に調理師免許を取っていたことや、退職してまだ2年ほどだったということもあってでしょうか、ふるさと館を再開することになったときに、JAからお声がかかったんです。それが4年ほど前ですね。

客商売は生まれて初めてでしたが、ここでいろいろな人とお話しするのが楽しいです。毎週、週替わり定食のメニューを考えるのは楽しみでもあり、苦しみでもありますが(笑)。
ほかのお店では食べられないような、特徴のあるメニューを出したいと思っています。中国から筑北村へお嫁に来た人に教えてもらって皮から餃子を作ったり、タイからお嫁に来た人に教えてもらったグリーンカレーを提供したり。本格的な、ちょっと変わった料理が食べられることも知られてきて、なかなか好評なんですよ。餃子は「市販の皮を使ったものと違って、柔らかくておいしい」と言っていただいています。野菜は地元の友人が持ってきてくれます。筑北村の野菜がたくさん食べられるのも、ふるさと館の自慢です。実は、料理自体はそれほど好きではないんです。今あるものを活かすことを考え、そのアイディアを形にするのが好きなんですね。

何年も赤字続きでしたが、この場所で食事が食べられるということも定着してきて、通りすがりの方が寄ってくださることも増えました。最近はオードブルやお弁当のご依頼もいただけるようになったんですよ。
儲けることよりも、このお店を開けていることが大切だと考えています。みなさんの交流の場・憩いの場として提供していきたいんです。とにかく、ゆっくりできる食堂です。

食堂経営だけにとどまらず、パワフルに活動中

ふるさと館の営業は14時までですから、そのほかにも様々なグループに参加して活動しています。
そのひとつが、長野県農村生活マイスター。筑北村には私を含め10名ほどのマイスターがいますが、農村生活マイスター協会筑北村協議会では年に4回『かあちゃん塾』を開催し、筑北村に伝わる伝統料理などをお伝えしています。20~80代まで、幅広い参加者が集まりますよ。地元の方が多いですが、どなたでも参加できる講習会です。

『味のさかい』は、筑北村の坂井地域にある、女性の農産加工グループです。蕎麦かりんとうや大豆クッキーなど、地元の農産物を使ったお菓子作りを始めました。いまも継続的に製造・販売しているのはおかきです。室内で日陰干しして作るので大変ですが、おいしいと評判です。
『でんでん』は、本城地域のこれからを考えていこうと活動している地域おこしグループです。音楽鑑賞会、桜めぐりなど、本城地域のイベントなどを企画・開催しています。

個人的には、これからジャムなどの加工品を作っていきたいです。筑北村にある加工所を活用して、直売所で販売できるようなものを。食堂は年をとると体がきつくなってきますけど、それなら80歳を過ぎても続けられるでしょ?(笑)

移住者を受け入れる村の体制と、迎え入れる村人のあたたかさ

筑北村は本城村・坂北村・坂井村が合併して広くなりましたが、合併前の、村ごとの人柄や行事などの特徴が残っているのがいいですね。みんな優しくて親切。行き会って会話をするのがとても楽しみです。
また、筑北村には移住者の受け入れ体制があるので、都会から移住してきた人たちも結構います。定年を過ぎてから自然に囲まれた生活を望まれるのかしら、年配の方も多いです。そういう方々との交流も楽しみですね。
現在、筑北スマートインターチェンジの設置が検討されていますが、設置されればより来やすくなり、若い人たちにとっても身近な場所になるのではないかと期待しています。
筑北村の良さは、自然と、人間のあたたかさ。私は大好きです。

ふるさと館について

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山越友子さん(67歳)

/出身:長野県松本市 職業:自営業 地域:本城
酵素玄米が食べられる健康的な週替わり定食が人気の『ふるさと館』の経営者で、主に調理を担当。長野県農村生活マイスター協会、『味のさかい』、地域おこしグループ『でんでん』など複数のグループでも活動している。

ちくほく・ほくほく体験

JA松本ハイランドに通っていたころは、帰ってきて筑北村の人たちと会うとほっとしました。みんな温かくて、心が安らぎます。ギスギスした感じがないんです。みんなが温かく迎えてくれる、帰ってきてよかったなと思う、そんな場所です。

お気に入りちくほくスポット

我が家の庭から見えるアルプスです。家が高い場所にあるので、アルプスがすごくきれいに見えるんです。松本でアルプスを見て育ったので、山が見える景色はほっとします。

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