ちくほくのひとVol.20玉井 政彦さん

早期退職でもう一勝負!
筑北村の坂井地域を元気にしたい。

取材のため向かったご自宅には、何台ものバイクやボンネットが開いたままの修理中の車がある。そして、家に入ってまず目にとまったのは、たくさんの表彰楯。二輪車安全運転大会のものだという。二輪車安全運転大会とは、安全で適正な運転が実践でき、かつ、ほかの模範となるライダーの育成を目的に法規履行走行と技能走行の競技形式で審査が行われる大会だそうだ。
「学生時代からトライアルという競技をやっていました。鈴鹿で行われる全国大会は55歳のときに出たのが最後です。県大会の成績優秀者が全国に進みますが、全国ではなかなか結果は出せなかった。27歳のときに全国9位になりましたが、年とともにダメになりますね。県大会では1位になれても、全国だと難しい。というか、鈴鹿の暑さがダメです」と笑う。
今日の取材は東洋医学にも造詣が深い薬剤師だと聞いていたのだが、修理中の車といい、二輪車の大会といい、白衣よりもつなぎが似合いそうな雰囲気だ。しかし、白衣でもつなぎでもなく、私服で迎えてくれた玉井さん。薬剤師以外にもいろいろな顔を持つ彼は、筑北村でどのように育ち、今何をして、そしてこれから何をするのだろうか。

[ 2020年4月21日更新 ]


工学少年、薬剤師になる

小学生のころから、父の車のタイヤを交換していました。昔はホイールを2セット持つことができなかったので、分解して、スパイクタイヤに組み替えていたんです。小学校の通学途中に自転車屋さんがあって、おじさんが修理する様子をよく眺めていました。「自分にもできるじゃん」と思いながら。近所のお兄さんが趣味でエンジン付きの模型飛行機を作っていたこともあり、小学校高学年のときは自分で買い込んで動かしていました。家族にはこういうものに興味のある人なんていなかったんですけどね。

そんな子どもでしたから、高校3年の夏休みまで、工学部へ進学するつもりでした。そのころ、母が東京の病院に入院したのですが、同室に薬剤師が入院していて、お見舞いに来る友人も薬剤師やその卵が多かったんです。話を聞くうちに、薬剤師の仕事に良い印象を持ったようで、「薬なら一生勤め先がある」と勧められました。当時、工学系の就職はあまり良くなかったこともあり、「じゃぁそうするか」という簡単な気持ちで金沢にある大学の薬学部へ進学しました。

卒業後は坂井に戻り、実習でお世話になった相澤病院へ就職。昭和60年1月1日からは安曇野赤十字病院に34年間勤務し、早期退職したところです。

車の修理も家造りも、すべてはいかに段取りするか

車やバイクの修理、ハーフビルドでの家造り、Raspberry Pi(イギリスで学校教育用に開発された小型コンピュータ)、アマチュア無線……多趣味だと言われますが、自分の感覚としては全部一緒です。すべての流れは料理と同じで「いかに段取りするか」だと思います。飛行機を飛ばすのも、車検を通すのも、基本を把握してそのとおりにやれば、だいたいのことはできる。突き詰めているように思われますが、自分としては消化不良ですよ。コンピュータの回路も車のエンジンも、計り知れません。そこまではいけませんから。趣味のように楽しんでいる感覚もありません。車を直すのも、別に好きなわけではないんです。長距離通勤で車検のときには過走行となってしまうので、下取りに出しても大した額にはならないし、3年ごとに新車に交換するのもなぁ……と感じて、廃車になる車を直して乗るようになりました。「自分でできる」と思ってしまっているので、工賃払うのが嫌いなんですね。おかげで、家の給湯器が壊れれば業者さんじゃなく私に電話がかかってきます。専門家にお願いできれば良いのに、一生懸命自分で調べて分解し、部品を発注している自分がいます。自分で嫌な性分だなぁと思いますよ(笑)。

自分で家を造ろうと思ったのは、あらゆる面で余力をもって60歳を迎え、もう一勝負したいと思ったからでした。本当は基礎工事から自分でやりたかったんですが、家族に反対されてハーフビルドに。内外装を自分でやっています。24年前に造り始め、その2年後に引っ越しました。当時はまだ台所も電気もない状態。同じ敷地にある母屋で食事をして、家に寝に帰る、キャンプのような生活でした。現在もまだ完成していません。だって、使わない部屋を造る必要ないでしょう? 必要な場所に手を入れながら暮らしています。
今後の展望としては、3坪ログハウスを造りたい。3坪なら建築許可申請がいらないし、農地にも建てられるので。木を切るところから自分でやりたいです。チェーンソー1台持って山に入って住処ができるって、楽しいと思いません?

ビアガーデンに盆踊り……坂井を元気にしたい!

平成26年にスタートした『坂井ちょっとやる会』では代表をしています。坂井地域を、ちょっと楽しく、ちょっと元気に、ちょっと住みたくなるような地域にしていこうと活動しています。

きっかけは、平成25年秋に筑北村づくり推進室で始まった道の駅ならぬ『里の駅(地域の拠り所となる場所)』づくりでした。誘われて参加したワークショップで、男女1名ずつ代表を出すとなったとき、男性はなかなか決まらなくて。早く帰りたくて手を挙げました(笑)。その活動が終わったあとも続けてみようということで、二次募集していた地域を再熱させるという県の事業に応募、採択されました。

最初は講師を呼んで森のくすり塾というセミナーを開催しました。それから、定期的に親子料理教室を開催したり、イベントに『ちょっとやるカフェ』を出店したり。去年はビアガーデンを開催しました。レシートに「坂井地域を元気にしましょう」ってメッセージを入れたくてレシート用プリンタを注文したら、前日の晩に届いたのでほぼ徹夜で準備。今では良い思い出です。評判が良くて、いろいろな地域から来てくれました。今年は3回やりたい。盆踊りもやりたいですね。
冠着荘、直売所まんだらの庄、そば処さかい、坂井いちご園、オートバイ神社である修那羅山 安宮神社、アルパカ農場まで含めて、連携を作っていけたらいいなと思っています。

坂井での漢方相談薬局オープンが夢

早期退職したのは、坂井で東洋医学・漢方を中心とした相談薬局をやろうと考えたからです。母親を見ていると、薬をもらうのも大変なんですよ。処方箋の受け取り、会計、調剤、配達まで薬局がしてあげたらいいんじゃないかと思って。しかし、2019年に医薬品医療機器等法の改正が成立し、また、2020年4月には2年に一度の診療報酬改定があります。それらの変化によって薬局がどうなっていくのかの見極めがつかないので、今は様子見をしている段階です。

坂井で薬草が栽培できたらという思いもあり、4年前から坂井ちょっとやる会で試験栽培を始めています。生薬を医療品として使うためには、日本薬局方の基準を満たしているかの検査を受ける必要があり、ある程度の栽培量と費用が必要になります。そこまではなかなかできず、現在は薬用植物を育てているというところです。ちょっとやるカフェでは、薄荷(はっか)を使ったお茶などを出しています。薄荷には熱を取る作用があります。東洋医学では体を冷やすのはよくないと考えますから、夏に温かい薄荷茶をおすすめしています。

筑北村は交通の便がすごくいいです。長野・松本・上田へは30~40分。勉強会で東京へ行きますが、家を出てから東京駅まで2時間です。こんなに交通の便の良いところはない、住むのには最高だと思っています。それに、田舎で敷地が広いこともあり、家の庭をパジャマで歩けます(笑)。以前、豊科でアパート暮らしをしていたときはできませんでしたから、楽で、とてもいいですよ。

玉井 政彦(61歳)

出身:坂井地域 松場
職業:薬剤師
地域:坂井地域 松場
薬剤師として長年勤務した職場を2020年2月に早期退職し、坂井地域で相談薬局を開きたいと準備中。幼少時代からラジコン飛行機を手作り、ご自宅はハーフビルド、愛車は自分で直したものという器用さの持ち主。地域おこしグループ『坂井ちょっとやる会』代表。

ちくほく・ほくほく体験

去年、坂井ちょっとやる会の主催でビアガーデンを開催しました。下は3、4歳の子どもから、上は90代のおじいちゃんまで来てくれて、「久しぶりにいろいろ話ができてよかった」という言葉をもらったとき、ほっこりしました。家に引きこもっていては話ができないですからね。今年もまたやりたいです。

お気に入りちくほくスポット

永井ダムが好きです。上山田に抜ける坂上トンネルの手前、永井川の上流にある、水が青いダムです。春は桜、秋は紅葉が楽しめますよ。

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