新婚生活のステージに選んだのは、
子育て支援事業が充実し、自然豊かな筑北村
坂北駅から北東方面に線路沿いを少し進むと、柱と柱の隙間かと見紛うような、線路下の狭く短いトンネルがある。そこを抜けるとパッと視界が開け、景色のほうから目の中に飛び込んできた。広々とした空と緑の木々を背景にしてもっとも存在感のある建物が『夢パレット坂北』だ。昭和町にある村営アパートで、3階建ての建物が3棟、全30戸。敷地内には小さな公園もある。少し山側に上ると北アルプスが一望できるという自然の真ん中に建つアパートながら、坂北駅から歩いて5分圏内の距離だ。
夢パレット坂北は、若者が定住することによって地域が活性化し発展することを願った“若者定住促進住宅”として2005年に完成した。3LDKという広々とした間取りながら、家賃は3万6千円(2018年8月現在)。単身NG・年齢制限があるなど、若者定住促進住宅として条件や制限はあるものの、自然豊かな環境で子育てできる家がこんなに安く借りられるのだ。実際に多くの子育て世代が住んでおり、子どもたちの元気な声が聞こえてくる。
今日お話を伺うのは、この夢パレット坂北に入居して数か月という若いご夫婦だ。筑北村出身ではないお2人がなぜ筑北村を選び、どのようにしてこの住まいを見つけたのだろうか。
[ 2018年10月1日更新 ]
信州で子育てしたい。転勤をきっかけに転職を決意
芝央さん:
県内の会社で8年間、水道関係の仕事をしていましたが、去年10月、愛知県に転勤になってしまって。11月にプロポーズする予定でしたし、地元で子育てしたいという思いもあって転職を決意。5か月で戻ってきました。
前職では市町村から委託を受けて動いていたため、公務員と接する機会が多かったんです。「もし転職するなら公務員を目指してみようかな」という気持ちがありました。年齢的に、公務員として雇ってもらえる市町村は限られいるんですが、その中に筑北村を見つけました。筑北村には祖父が住んでいて、何度も来ている場所です。
詩織さん:
私は一緒に愛知に行ってもよかったんですが、彼は長野にいたいと言いますし、引っ越したら仕事を探さなければいけないので待っていることにしました。
芝央さん:
現在は、筑北村役場の建設課上下水道係で働いています。蛇口をひねれば出てくるのが当たり前の水ですが、自分が配る立場になって、当たり前を作るための苦労を知りました。委託で動くのではなく自ら企画して自ら動けること、そして、当たり前の環境を作るための一翼を担うことで筑北村の皆さんに貢献できていることにやりがいを感じています。
詩織さん:
私は県内の短期大学卒業後、県内企業に就職しました。ずっと県内にいたので外に出てみたいという気持ちがあり、4年ほどで退社して新幹線の車内販売などを行う東京の会社に転職。でも疲れてしまって……2年で東御市の実家に戻りました。いまは観光列車の客室乗務員として、しなの鉄道で働いています。
将来を見据えて選択した、若者定住促進住宅 夢パレット坂北
芝央さん:
夢パレット坂北は、入居してまだ4か月ほどです。サイトで賃貸物件を探していて見つけました。独身者は入居できませんが、結婚を考えていたのでちょうどいいなと。決め手は家賃です。3LDKという間取りで3万円台の安さは魅力でしたね。篠ノ井がいいかなと思っていたんですが、ここを見つけて、とにかく住んでみようと思いました。
2人とも街中に住んでいたので、近所にスーパーがないことは不便に感じます。
詩織さん:
戸倉駅に出勤しているので、仕事帰りに買い物しています。通勤は遠くなりましたし、峠を越えて行くので大変ですね。
子育て環境としては魅力的です。筑北村は子育て支援事業が充実していて、結婚祝金5万円、出産祝金5万円の交付がありますし、3歳児以上の保育料が無料なんです。都心などでは待機児童が問題になっていますが、筑北村ではありません。スムーズに子どもを預けられるというのは大切です。
芝央さん:
夢パレット坂北は子育て世代中心なので、子どもが生まれたときに住みやすさを実感するでしょうね。赤ちゃんの泣き声が近所迷惑になってしまって住みにくいという話もよく聞きますから。
それに、電車が好きなんです。超豪華列車の TRAIN SUITE 四季島が通ったり、新幹線が開通する前に走っていた特急あさまが快速列車として通ったり。田園風景の中を電車が通っていく……そんな眺めが見える部屋を気に入っています。
筑北村は空が広いし、星もきれいです。ここに来てから、よく空を眺めるようになりました。
エアコン、動物、ごみ、音……筑北村で驚いたこと
詩織さん:
筑北村に住んでみて驚いたのは、賃貸物件にエアコンがついていないことです。主人は必要ないと言いましたが設置しました。今年は暑いので正解でしたね。それから、人よりも動物に会うほうが多いのではと思うほど、動物に会います。通勤で峠を使っていることもありますが、野うさぎや鹿は初めてです。
静かな村ですけど、電車の音やカエルの声はうるさいです。最初のころは「うるさくて眠れない!」と思いましたが、もう慣れました(笑)。
芝央さん:
朝は5時台、夜は11時台まで電車が通ります。窓を開けているとうるさいですが、電車好きなのもあって、音で種類が分かるようになってきました。自然と慣れるもので、今朝は始発が通ってもぐっすりでしたよ。
プラごみを捨てる日が月に1回しかないことにもびっくりしました。長野市では毎週捨てられますし、プラごみって普通に生活しているとけっこう出るものなので。可燃ごみも週1回しかありません。でもごみの分別は比較的ラクですし、「ごみ収集日が少ないからあまりごみを出さないようにしよう」というエコ意識につながりますね。
元気になった祖父と米作り! 田舎暮らしで豊かな自然を満喫中
詩織さん:
夜はちゃんと暗く、朝はちゃんと明るくなる。人間の根本的な生活ができる場所だと感じます。筑北村は自然が豊かなので、子どもはのびのび育てたいですね。今後、悩みそうなのは子どもの進学です。高校から村外になりますが、電車の本数が少ない。子どもの選択肢を増やすためにも、もう少し進学しやすい環境が整うといいなと思います。あと、思っていたよりも街に出にくいです。
芝央さん:
私は逆に、行きやすいと感じてます。長野・上田・松本という県内主要都市に同じくらいの時間で出られるので魅力的です。
それから、体育館などが複数あって、スポーツできる環境が整っています。筑北村にきてから始めたのは釣りですね。嫁は土日出勤なので、週末はひとりで田舎暮らしを満喫しています。
米作りも始めました。祖父は足を悪くして以来やめていたんですが、私たちが移住してきたら喜んで急に元気になって。別所地区にある祖父の田んぼで一緒に米作りをしています。稲刈りの経験しかありませんでしたが、今年は田植え前の土を起こす段階から関わってきました。自分で作ったおいしい新米が食べられる日を思いながら楽しんでいます。
来年5月に結婚式を挙げるんです。一緒の休みは準備などの用事を済ますことに追われていて、まだあまり2人で出かけられていません。筑北村に移住して松本が近くなったので、嫁にも私が好きな松本山雅にハマってもらおうと策略中です。そういう意味では、松本へサッカー観戦に行きやすくなったのもうれしいですね。