ちくほくのひとVol.09飯森實さん

いくつになっても生きがいを感じてほしい。
筑北村を元気にするために始めた『みらい宿(じゅく)』

今回お伺いするのは坂北駅の近くにあるラベンダー畑だと聞いていたのだが、まさか花が見られるとは思いもしなかった。10月の畑に花があるはずないと決めつけていたのだ。しかし、一部だがラベンダーが咲いていた。初夏に咲いた花を剪定することで、秋に再び花を咲かせるのだそうだ。しかも、ラベンダーの香りは花から漂うものと思っていたが、実際には花だけでなく葉や茎からも良い香りがする。花が咲いていなくても、ラベンダーの香りは十分楽しめるのだと知った。

この日は飯森さんとともに何人かの仲間が畑に集まってくれたのだが、あいにくの雨と風で、ラベンダーを見ながらの取材は断念。急きょ公民館に移動することとなった。しかし、みらい宿で作っているラベンダーのドライフラワーや枕を並べたので、畑でなくても十分に香りを楽しめた。触るたびにラベンダーがふわっと香り、インタビュー前の緊張をやわらげてくれる気がした。

飯森さんは『みらい宿』という活動の代表を務めているという。どのような活動をしているのか、ラベンダーを栽培しているのはなぜか、そして、飯森さんはどんな人なのか。メンバーも集まって、座談会のようなインタビューが始まった。

[ 2017年11月8日更新 ]


筑北村で生まれ育ち、自然に始まったそば打ち

麻績村に住んでいた祖父が、仕事の都合で筑北村(当時の坂北村)に引っ越したそうです。私は生まれたときからここに住んでいます。東京で仕事をしていたので、5年ほど住んでいました。実際に住んでみて、東京は住むところじゃないなと思いましたね。
筑北村に戻ってきたのは長男だからです。当時は入社したら東京での本社勤務が当たり前でしたから、戻ってくることを考えて松本に支店がある会社を選びました。
建築機械のメーカーで営業をしていましたが58歳で定年退職し、農業を始めました。父が使っていた畑を荒らしてあったので。いまはそばやエゴマ、野菜などを作っています。

この辺りでは、常会で伝統的にそば会を行っていて、ごく自然にそば打ちに触れてきました。そばは比較的簡単で育てやすいこともあって、畑を始めるときにまずそばを育てようと思いました。
そば打ちを始めたころは、うまくできないことが楽しかったですね。ある程度できるようになってくると、今度は自分が打ったそばを「おいしい!」と喜んで食べてもらえることが喜びになりました。いろんなやり方を試すのも楽しいです。そば粉100%で打ってみたり、練りをやわらかくしてみたり、太めに切ってみたり。よりおいしいそばにするために、いろいろと試行錯誤しています。

地域おこしから始まった活動『みらい宿』

きっかけは国から支援金が支給される地域おこしでした。旧村ごとに何人か集まって、上田や小布施などに視察に行きました。せっかく集まったので、1年間の活動後に引き継ぐ形でみらい宿を始めたんです。坂北地域だけでなく、本城地域の『でんでん』、坂井地域の『坂井ちょっとやる会』など、グループごとに活動が続いています。

みらい宿ではラベンダーを栽培したり、そば打ち、キムチづくり、入園準備の裁縫などの講習会を開催したり。メンバーの特技を生かし、楽しめる活動をしています。今のメインはラベンダーです。きっかけは、高齢になって手が回らないというラベンダー畑を手伝ったことでした。自分たちでもやってみようということになって、最初の年は140株、今年は190株を購入して育てています。イングリッシュラベンダー、フレンチラベンダーなど、いろいろな種類があるんですよ。花の色も違います。
ラベンダーは初夏と秋に花を咲かせるので、収穫して商品にします。生活用品と生活を豊かにする商品、2つをテーマに模索中です。現在はドライフラワー、ラベンダースティック、枕、お手玉などを作っています。ラベンダーは触れば香りが復活するので、何年でも楽しむことができるんですよ。特に枕が好評です。ハト麦を入れたら触り心地が良くなり、ラベンダーの香りがより引き立つようになりました。商品に使う材料も自給自足したいので、来年はハト麦も作る予定です。できた商品は西条温泉とくらやさかきた道の駅にある直売所の野菜BOX、イベントやお祭りで販売しています。

喜びや生きがいにつなげて、人を、村を元気にする!

みらい宿の良いところは、おいしいものが食べられること(笑)。メンバーは20代から80代までと幅広いですが、食べることが好きない人が多いので。月に1回の会議は、きのこ汁や松茸ご飯、手作りのうどんやそばなど、1人あたり300円の予算で夕食を食べながら行います。
もちろん、みんなで何かを一緒に作る時間も楽しいです。活発な女性の協力が活動のパワーになっています。

目標は、みんなで毎年ハワイ旅行に行けるような売上を上げることです。お金と楽しさ、両方そろうことが活動を長続きさせる秘訣だと思っています。ハワイとまではいかなくても、お茶菓子代が少しでも出せるようになればと思うんです。
“自分があてにされている”と感じることは、生きる喜びを与えます。だから、みらい宿では年齢に関係なくできることをしていきたい。高齢の方でもメンバーとして仕事をし、わずかでもお金をもらう。それが喜びや生きがいにつながる、人を元気にすると思っています。みらい宿は村を元気にするために始めた活動ですから。

今は1反程度の畑ですが、もっと増やしていきたいです。3反くらいになれば、自由にラベンダー摘みをしてもらうこともできるかなと考えています。草刈り、剪定など結構大変なので、仲間ももっと増やしていきたいですね。
ラベンダーを摘んでいるだけで日常から解放され、別世界にいられるような幸せが得られるというメンバーもいます。ぜひ多くの人に参加してほしいです。

住めば良いとこ。一度じゃなくてず~っと居たい筑北村

みらい宿は畑でラベンダーを栽培していますが、庭で育てている家も結構多いです。田舎の人はきれいな植物を自然と庭に植える。それが村の景色になっているんです。メンバーには関西からの移住者もいますが、「初めて訪れたときにきれいな村だなと思った」と言っていますよ。

私は東京から戻ってきて以来ずっと筑北村に住んでいますが、自給自足できるのも、野菜や果物が豊富なのもいいです。自分で育てた安全・安心なものはおいしいですよ。土地のおかげなのか、空気のおかげなのかはよくわかりませんが、とにかくおいしさが違います。何もつけずに野菜をそのままでおいしく食べられるのは、ここにいるからこそですね。 筑北村は生活するのに最高の場所です。食べ物だけでなく、高速道路、高速バス、電車、新幹線、松本空港も近いので、どこに行くにも便利なんです。心あたたかい人が多い、食べ物がおいしい、交通の便が良い。筑北村は住めば良いところですよ。

飯森實さん(65歳)

出身:筑北村 職業:農業 地域:坂北地域
定年退職後は筑北村で農業を営む。そば打ちが特技で、自分で育てたそばを使ってそば打ちをしている。地域おこしグループ『みらい宿(じゅく)』代表。グループでは主にラベンダーを栽培し、収穫したラベンダーを使ったアイディア商品を製作・販売している。

ちくほく・ほくほく体験

普段から感じていることなので逆に難しいですね…。いま一人暮らしなので、食べ物を持ってきてくれる人がいるのはありがたいです。心が温まりますね。

お気に入りちくほくスポット

坂北の東山から見るアルプスですね。雪が少しかぶっているときがいいです。見ていると癒やされます。

このページの先頭に戻る