ちくほくのひとVol.16地域おこし協力隊

筑北村の地域おこし協力隊(現役・OB)によるコタツを囲んだ座談会 ~後編~

全11名の現役協力隊員のうち7名と、元隊員1名、合計8名が参加した座談会。今回は前編に続き、後編をお届けする。地域おこし協力隊員は筑北村でどんな生活を送っているのか、休日の過ごし方、そして、今後の目標などを伺った。

[ 2019年5月7日更新 ]

筑北村地域おこし協力隊座談会 参加者プロフィール

青木 陽太郎(26)

出身:長野県長野市/着任:2017年4月/所属:企画財政課
情報発信・広報・その他地域づくりに関わる活動などを担当。今回の協力隊座談会を企画・段取りした張本人。卒業後は筑北村でゲストハウスを開業すべく、休日は家の改修にいそしむ。

進藤 香織(28)

出身:三重県松阪市/着任:2017年4月/所属:教育委員会 生涯学習係
欲しい人に必要な情報が届くような情報発信や、地域のいいもの(ヒト・モノ・コト)を繋げて地域発展の可能性を広げるための活動を行うなど、地域の情報拠点づくりに力を入れている。現在は地域運営組織として取り組んでいるが、NPO法人化を目指す。現在妊娠中で、8月に出産予定。

榎並 真由子(37)

出身:静岡県伊東市/着任:2018年4月/所属:企画財政課
移住促進を担当。ヒアリングを行い、移住者や移住希望者の支援を行っている。ご要望の多いセミオーダー型移住ツアー等の制度化を進めると同時に、移住応援や移住後のサポートを担当する現地サポーターも制度化させるべく進めている。

前迫 裕介(29)

出身:鹿児島県鹿児島市/着任:2018年4月/所属:観光課
ホットステイ(農村体験型学習)に力を入れている。協力隊任務終了後には収益となる事業として発展させるべく、筑北村と村外とのパイプ役となって村内外を奔走し、準備を進めている。

浜辺 篤伸(26)

出身:大阪府四條畷市/着任:2018年6月/所属:教育委員会 生涯学習係
社会体育事業を担当。スポーツを通してみんなを健康にする取り組みを行うとともに、筑北村の体育施設の利用促進のための大会誘致などを行っている。

市川 満久(28)

出身:長野県長野市/着任:2019年1月/所属:産業課
着任からわずか3か月。筑北村の山の資源に目を向け、木材利用による地域おこしを考えている。趣味のトレイルランを生かして、資源利用だけでなく山そのものもスポーツに活用したいと画策中。

≪OB≫ 飯田 智子(52)

出身:愛知県豊橋市/着任:2016年4月/所属:企画財政課
協力隊在職中は移住促進を担当し、空き家バンクの運営や移住サポートブックの作成などを担当。2019年4月より、諏訪市で2度目の協力隊になった。

≪OB≫ 大場鈴子(29)

出身:愛知県西尾市/着任:2015年3月/所属:企画財政課
協力隊在職中は情報発信・広報・その他地域づくりに関わる活動などを担当。卒業後も筑北村に残り、フリーのデザイナーとして活動中。


Q. 筑北村での生活はいかがですか?

前迫:驚いたのは、食べ物をいただく量の多さですね。以前、田んぼを手伝ったんですが、そうしたら1年分ほどのお米を一気にいただきました。こんなの、普通では考えられない。


榎並:私も、食費はほぼ使わない状態ですね。野菜はいただいたり、自分で作ったりもしているので。


青木:うちは毎月2万円を食費として奥さんに渡しているんですけど、それで間に合ってます。1人1万円の食費って、けっこう安いですよね。それだけ野菜やお米を分けていただいているんだと思います。野菜も直売所で買えば安いですしね。


飯田:1人1万円の食費は安いよ~。筑北村は畑や田んぼをやっている人が多いからだと思いますけど、信頼関係が生まれてくると、「いつもありがとう」という言葉が野菜やお米と一緒に渡されることが多いんですよね。


進藤:みなさん温かいし、おもてなし精神が強い気がする。顔を出すたびに、お茶や手作りの漬物をふるまってくださったりとか。


前迫:重荷に感じているわけじゃないけど、その分、外から来た若い人への期待を感じます。


飯田:一方で、思ったよりお金がかかるなというのはあります。冬は寒いので灯油代がかかるだけじゃなく、スノータイヤの用意もあるので。


一同:(全員賛同)


前迫:第一印象でいえば、方言がない! 僕の思い描いていた田舎暮らしの“すごい方言”は全然ない。みなさん標準語で話しかけてくるから、田舎に来た感じがしなかった。


浜辺:そうですね。だから、よそから来た人間でも言葉の問題で困ることは少ないです。


進藤:ほぼ標準で、語尾に「~だがや」とか「~せい」って、付く程度ですよね。


榎並:夜が早くないですか?


前迫:よく言えば、星がきれいですよね。


榎並:そうなんだけど、すごく暗い。漆黒の闇が来る感じ。音もしないし。


進藤:街灯がないからかな。本当に光がない感じですよね。


飯田:家に帰るのに懐中電灯がいるんだ!と初めて知りました。足元が全然見えなくて。


前迫:確かに、アプリ入れた。


飯田:それから、ゴミが落ちてないよね。きれいだなって思います。


浜辺:あー、いわれてみれば少ないですね。


大場:ゴミ収集日を増やしてほしい。


一同:(全員賛同)それそれ!


前迫:いま週1なんで、せめて週2に。


進藤:生ごみだけでも増やしてほしい。若い人はみんな増やしてって言ってるよね。


飯田:畑を持っている人は生ごみを自分で処理できるから、困っていないのかもね。


Q. 筑北村ではどんな休日を過ごしていますか?

前迫:最近は『キングダムハーツ(ゲーム)』かスノボです。長野に来たからにはウィンタースポーツやらないと! もともと火山灰の場所で生まれ育ってるし、東京も雪はそんなにないんで。せっかくだからイケてる男になりたいなと思って。


一同:(笑)。


浜辺:休日はあまり筑北にいることがなくて。各地で審判活動をしていることが多いです。なので、土日休みなのがすごく助かっています。大会はやっぱり土日にあるので。もう趣味ですね、休日はほぼほぼフットサルやサッカー、ビーチサッカーの審判活動をしています。そういった面でも、筑北村はインターが近いのでラッキーだなと思います。


市川:トレイルランが趣味で、休日はほとんど、どこかしらの山を走っています。筑北村の良いところは、家から走って山に行けること。トレーニングに適しているし、トレーニングの後にリラックスできる温泉もある。電車や高速道路といった交通の便もいいので、いろいろな人を呼び込めると思っています。筑北村でのトレイルランなら、おすすめは四阿屋山。北アルプスがどーんと見えて、気持ちいいです。


進藤:趣味はモノづくり。最近は猫つぐらを教えてもらって作っています。畑を借りたので夏は畑作業をしたり、夫と二人でおでかけしたり。家でゆっくり疲れをいやすことも多いです。


大場:フリーで仕事をしているので、休んでいるのか仕事しているのかよくわからない状態が多いですが、夏はたまにハイキングに行きます。


榎並:私は北アルプスか田中さんの家ですね。田中さんは移住してきたご家族で、同じ関西からの移住者同士だから気が合うのか、毎週のように伺ってます。昼ごはんをいただいて、夜ごはんをいただいて、お風呂をいただいて、22時くらいに帰る……ありがたいですね。あとはもう山。山というか北アルプス!


飯田:予定がなければずーっと家にいます。家にいるのが苦痛じゃなくて、幸せを感じますね。出かけるときはあちこち。嵐のコンサートとか、神社巡りとか。


青木:寝るのが好きなんで、寝れる日は遅くまで寝ていて、ゴロゴロしたり、家の改修をしたりします。休日は家にいることが多いです。


Q. 任務中・任務後の目標や夢はありますか?

青木:定住するつもりで筑北村に来たので、まずは1年かけて物件探しをしました。ちょうど気に入った家を見つけたので、そこでゲストハウスというか、宿業をやれたらいいなと思って、いま地道に改修などをしています。筑北村で何かしらお金を稼げる方向で取り組んでいこうと思っています。


前迫:村外にある旅行会社などと筑北村とをつなげるパイプ役になりたいと思い、いまはいろんな旅行会社に挨拶に行ってコネクションを作っています。協力隊在職中に話を詰めて組織化できるように、事業計画書までは作りたいです。それと合わせて、筑北村に事業拠点となる物件を探しているところです。


浜辺:協力隊の活動を始めたばかりで、任期が終わってからの具体的なビジョンはまだありません。漠然としていますが、筑北村に残りたいなとは思っています。


市川:筑北村の山の資源はあまり使われていない状況ですが、いまも細々と使っている人がいます。そういう人たちに教わりながら、木材や林産物といった山の資源を広げていき、また、それで自分も食えるように生業としてやっていけたらと考えています。
また、山を資源として使うだけでなく、スポーツにも役立てたいです。上田や長野にトレイルランの仲間がいるので、そういう人たちを筑北村に呼んで一緒にトレーニングをするとか、そういったことをやっていきたいと考えています。


進藤:目標は、いま力を入れている情報拠点のNPO法人化です。本城・坂北・坂井・麻績の全地区から10人くらいの地域の人たちがメンバーとして集まっています。
私も定住するつもりでいますが、住んでいこうと思ったときに、もっと若者が住める地域になったほうが良いと思っています。法人化して、もっと地域と若者・移住者をつなげる活動を行ったり、子育てをしながら収入が得られるようにしたりと、みんなで話し合い、考えているところです。


榎並:村内の人が応援してくれるので、「移動式公民館居酒屋」はやりたいです。それが派生して、卒業後は「スナックえなみ」になってもいい。これをやりたいと思ったのは、筑北村には飲食店が少ないから。松本や長野まで飲みに行くというのが、私は信じられなかった。自分の家の近くに居酒屋が回ってきたらすごく楽しい・便利だろうなと思って考えた企画です。私がママで、チーママは陽太郎ママだったり、香織ママだったりと日替わりでも面白いですよね。
卒業後は定住し、半農半Xで生きていきたいと思っています。一生に一度は山小屋で働きたいという夢もあるので、Xは山小屋だったり、村外に働きに出たりしてもいいなと思っています。山と農業からはかけ離れたくないです。


飯田:私はこのメンバーの中で唯一、村外に出ていくことが決まっていて、次の自治体で協力隊として3年勤めます。その後は、自分で何かしたいという思いがあるので、次の3年間は最初からそれを意識して、何ができるのかを考えながら活動していきたいです。まわりまわって、住むのは筑北村ということもなきにしもあらずで。筑北村は実家のように思っているので、つながっていたいなという思いでいます。


大場:独立して自分の仕事を始めたばかりなので、いまの仕事で安定するのが一番の目標です。 筑北でやっているからには、地域に根差し、地域を生かしてやっていきたいと思っています。なるべく筑北村の人と関わって、お土産とか、筑北のものをデザインして、何か新しいものを生み出していきたいと思っています。


Q. 筑北村で教わった、印象的なことといえば?

市川:昔、山に入ってお金を稼いでいた人たちからすると、山は資源の宝庫だと言います。山に生えている木を見ればお金に見えるそうです。山は利用方法を知り、きちんと活用すれば貴重な財産になるんだということを教えてもらいました。


浜辺:筑北村では初めて体験することが多いです。稲刈りも初体験しました。最近は、鹿の足の肉をもらって、さばいて食べるという初体験もしました。まずいと聞いていたんですけど、意外とおいしかったです。こんな経験は筑北村に来なかったら絶対にできなかった。そういうのも面白い村だなと思います。


榎並:フキノトウを食べたことはあるけれど、咲いているのを見たことはなかったので、道端に咲いていてびっくり。自分で採って食べてみたくて、ふき味噌を作っていただいたり、フキノトウのてんぷらの揚げ方を教えていただいたりしました。いまの時代、インターネットで調べれば何でもわかるけど、漬物や煮物など、人と人が会ってしか受け継ぐことができない味があるんだなと、筑北村に来て知りました。


飯田:そこは本当に良いところだと思う。


大場:私も、食べ物の作り方が勉強になりました。当たり前に味噌・醤油・キムチ・、漬物などを手作りしていてすごいなと。加工所があって、みんなでそこに集まって作る風習が残っているのがいいなと思います。


Q. 筑北村の魅力って、なんだと思いますか?

青木:筑北村という名前自体は知名度が低いのである意味穴場。広報の立場からすると矛盾してるんですが、穴場であるがゆえに教えたくないという気持ちもあります。観光地ではないので、みなさん落ち着いていて、変にガツガツしていない。みんなまったりしているんです。すごく良いところだと思います。


飯田:筑北村の人たちは、味噌も野菜もお米も、なんでも手作りです。人の本来の暮らし・営みって、自分で食べるものを自分たちで作るということ。そういう本来の生き方をしているのが、筑北村の魅力だと思います。


進藤:サークルやイベントが多くて、楽しめるものがいっぱいあるのがいいなと思いましたし、そういうものを通してつながりができるのが1番。私は実家が三重なので、親元が近くになくて困ることもあるんですけど、筑北村の人たちは移住者も受け入れてくれるし、だからといってズカズカ来すぎない。気にかけながら、困っていたら助けてくれる。地域の人と助け合いができるというのが1番良いなと思います。松本・長野に住んでいても、アパートでは誰ともつながりができませんでした。筑北村は良い人間関係ができるところが1番好き。


前迫:村の人は「何にもないよ」と口をそろえて言うけど、触れ合ってみると、原風景があったり、農作物があったり、人々の熱意があったり、けっこう面白いものが眠っている。少子化もあるので、みんなこの村で何かしなきゃいけないという危機感を持って悩んではいるんですけど、なかなか正解がわからなかったり、外からくる風が少なかったりするので、そこに関して、一緒に悩んでくれる外からの仲間を欲してくれていると思う。そういう意味で、僕らがいま求められているというか、割とすぐに溶け込めたり、一緒に対等な目線で話ができたりするのかなと感じています。まだ村民にはなれていない部外者だと思うんですけど、対等な目線で一緒に意見を酌み交わすことができるのはすごくいいなと。外からの意見を吸収してくれるのは、筑北村の良いところかなと思います。


Q. 今後、どんな人が筑北村の地域おこし協力隊に来てくれたらいいなと思いますか?

前迫:外国人が欲しいです。インバウンド向けの通訳とか翻訳をやってほしいです。日本で田舎暮らしがしたい、短期のホームステイやワーキングホリデーみたいな感じで、地域おこし協力体制度を使ってもらえたらいいなと思います。


飯田:南信に行ったときに外国人の協力隊、いましたよね。


進藤:いいですね。良い刺激になりそう。


榎並:女性! 女性が欲しいです!! 飯田さんが抜けたら私と進藤さんの2人しかいなくて、進藤さんが産休に入ってしまったら女子は私1人なんですよ。女性に来てほしい。


前迫:女心がわかる人材ならいるんですけどね。


女性一同:苦笑


男性一同:


市川:産業を釣り上げてくれるような林業系の人も欲しいです。


Q. 最後にOBの方より、これから筑北村の協力隊になろうとしている方々へアドバイスをお願いします

飯田:筑北村に住むみなさんは、心を開いて接すればそれに応えてくれますし、応援や協力もしてくれます。心を閉じていればそっとしておいてくれます。筑北村での活動や生活を楽しくするかどうかは、自分の気持ち次第です。みなさん優しくて温かい人ばかりですので、筑北村はお勧めですよ~!


大場:第一印象は何もない田舎に見えますが、住んでみるとかなり面白いです。協力隊は入ってすぐでも地域の中に飛び込めるので、人脈が広がりやすく、田舎で暮らしたい、生業を作りたいと考えている人にはとてもおすすめです。筑北村にはすでに活動している個性豊かな先輩協力隊がたくさんいるので、新しく入ってきた人でも活動しやすいと思います。


このページの先頭に戻る